七月のある金曜日のこの日の僕は非常に参っていた。

PCMAXを使って、いつものようにアポを取ったものの、当日になってどうにもそういう気分にはなれなかった。

というのも、昨日一人でやってしまったのである。一回だけならまだしも、その数は三回だ。どうにかしていた。

送られた画像を見る限りは、24歳の事務員をしているユラさんはとても綺麗な方だし、普段なら気分も晴れているはずだけれど……タイミングが悪かったとしか思えない。

いや、悪いのは昨日唐突に性欲に惨敗した自分だ。

新宿駅で夜八時に待ち合わせて、やって来たユラさんはちょっと不快に思ったかもしれない。

自分から会おうと猛アピールしてきた男が浮かない顔をしているのだから、実際に会ったらガッカリしていたと思わせていたかもしれない。

「こんばんは、ユラです」

少しばかり遠慮気味に挨拶して来た彼女に、僕は会釈をした。

「画像で見るより綺麗だね。あの女優に似てるって言われない?えっと……ちょいちょいドラマに出てる……」

「石原さとみ?たまに言う人いますけど、自分ではあんまり思わないですね」

「そうそれ!僕も似てると思うけどなぁ」

もう少し例えるなら、石原さとみから少々華を取った雰囲気で、つまり街中に溶け込みながらも綺麗なお姉さんというのがユラさんだ。

食事もカラオケも無く、僕らはホテルに向かった。なにしろ、目的は一つだったのだから。

けれど、さすがに仕事終わりで会ったものだからお腹も空いていたので、ホテルで食事をオーダーした。

軽食だったけれど、それでもこの数時間を楽しむ為なら充分だった。

まるで随分長い事同棲しているカップルのように別々にシャワーを終えると、僕らはベッドに座り向き合った。

先にシャワーを終えていた僕は、すっかり部屋の空調で涼しくなっていたけれど、まだ彼女の身体は火照ったままだ。

少し見つめ合ってキスをした。どちらからともなくだった。

何度か唇の感触を確かめ合ったあとで、舌が絡み合う。二人の間を繋ぐ唾液が煌めく。

ホテルに備え付けの歯磨き粉の味ではなく、きっと持っていたのであろう、薔薇のような華やかな味が舌先から伝わった。

髪を撫でると、ここではないシャンプーの香りがした。甘いベリーの香りだ。

それでいてバスローブに包まれた身体を露わにして、その身体を自分のものにするかのごとくキスをして行くと、ボディークリームの香りも薔薇だった。ここはもう花畑なのではないかと嗅覚は錯覚する。

肌に触れているうちに、消失していた性欲が回復していくのがわかった。

乳房、くびれ、そこから太腿にかけてと様々な部位にある丸みが『女性』に触れていると痛感させる。

その女性はこうも無抵抗に自分の身体を預けてくれているのだから、その時点で一人で得られる快感では程遠い。

つい一時間前に会ったばかりで、僕らは友達でもなければ恋人でもない。それがこんな状況にある。何故かというと、お互いに目的は同じだったからだ。

今日会ってSEXする。

理由も無くやるのではなく、理由がそれなのだから、お互いに『秘部』をこうもあけすけに目の前に晒して舐め合う事も何も不思議な事ではない。

彼女は火照る身体を隠しもせずに仰向けになり、両手を広げて抱かれる事を望んだ。

枕元にある安物のコンドームを着けて、僕はそれに応えた。

じっくりと指で彼女の肉襞を開き、既に膨張しきった股間の接続部を直結させる。

奥に進むごとに温かな肉壁が彼女の体温を伝えて、尚も気分を高揚させた。ゆっくりと、規則的に腰を動かす。その動きは徐々に増していく。

思えば、誰に習ったわけでもないのに誰もが同じ動きが出来るというのはこれは遺伝子レベルで植え付けられた行為なのかもしれない。

などと難しい事を考えられるのは行為が終わった後の話で、押し寄せる快感の前では目の前で恍惚の表情を浮かべる彼女の事で頭がいっぱいだった。 

流れるように彼女が身を起こし、そのまま腰を動かしまるで肉棒を模造品の玩具であるかの如く楽しみ始め、挙句には僕を押し倒し、そのまま快楽を支配するに至った。

C、或いはDカップはありそうな胸を揺らして、僕の上でベリーダンスのような艶めかしさで腰を振り身を震わせる彼女。

一人では決して得られない心の快楽までが、昨日燃え尽きたはずの性欲を掻き立てた。

そうしてもっと獣の如く、彼女を四つん這いにさせると、尻肉を鷲掴みにして普段絶対に見る事の無いヒクヒクと開いた尻の穴まで目にしながら、肉欲をぶつけ合う音も溢れ出るような水音も荒くなる互いの呼吸も全てが混ざり合って部屋に響くと、ほぼ同時に二人で果てた。

至って普通の行為だった。

一切の変態性も無ければ、どちらかが一方的にやられるでもない。

ほんの一時間半前に初めて対面した二人の行為の間、そこにはなんの関係性も無くただ愛はあったように思えた。

ぼんやりとする頭で横になり、しばし抱き合い何度かキスをしたユラさんの笑顔は間違いなくそう言っていた。